小川洋子さん
「ああ、これを、
子供の頃の私に読ませたかった」
と、つい独り言をつぶやいてしまう本と出会うことが、時にある。そう思わせてくれる本は、どれも例外なく素晴らしい。
小鹿のようにやせっぽちで、黒々とした濁りのない瞳を持っていた遠い昔の自分に、もしこの本を届けられたら……。
きっと私は、そんな幸福な想像に浸りながら、アンソロジーのページをめくることになるだろう。 |
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上橋菜穂子さん
なんと容赦のない、
なんと爽快なラインナップだろう。
「中学卒業までに読んでおくべき本」として、「土佐源氏」が入っていたりするのだ。
川の澱みに流れついたような人生を、なんの飾りもつけず淡々と語っているがゆえに、人にとって大切なことが静かに胸に迫ってくる、この素晴らしい口述記録や、小説の名作がずらりと並んだラインナップを眺めていると、まるで、そそりたつ壮大な雪の峰々を眼前に見ているような気もちになる。
人はこういうものを創りだせる生き物なのだと、子どものときに知ることができるほど幸せなことは、そうはあるまい。
先人は、たとえようもなく大きく、手ごわい。そう感じた子は、きっと、己が踏み出していく世界を、どこまでも広いと思えるはずだから。 |